いい大人のための食育会議

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Vol.2

低カロリーとバランスカーボ

「いい大人のための食育会議」第2回目は、ダイエットに取り組む人にとっては大いに気になる「カロリー」問題。低カロリーのほうが健康的に見えますが、果たしてそれは本当なのでしょうか。また、最近話題の「ローカーボ(低糖質食)」はダイエットに有効? それとも……。「いい大人」にふさわしいダイエットメニューを考えます。

低カロリーって身体にいいの?

村上農園(以下、村農):ダイエットを考えるうえで、やはり気になるのは食事のカロリー。漠然と「高いよりも低いほうが身体にいいのでは」という印象があるのですが、いかがでしょうか。

渡邉美和子先生(以下、渡邉):確かに、医療の現場で減量指導の主体になっているのは、カロリー指導です。ただし、必要な栄養素がしっかり確保できていなければ、身体は栄養素を求めて「守り」の体制に入ってしまいます。燃焼効率の悪い「太りやすい身体」になってしまうんです。健康で、いつまでも若々しくありたいなら、「腹八分目がベスト」というのが今の医学の見解ではありますね。

浜田陽子先生(以下、浜田):「カロリー至上主義」というか、あまりに低カロリー、低カロリー……と追求していくのも危ういですよね。カロリーはあくまでエネルギーを表す単位に過ぎないですから。カロリー値に関わらず、太る要因となりにくい食材はたくさんあります。アボカド、アーモンド、赤身肉などはその代表的なものです。カロリーばかりを気にして、身体にいい食材を摂らないのはもったいないですね。

渡邉:カロリーがあっても、身体にプラスとなるような栄養素をもたない食品のことを「エンプティカロリー」と呼ぶのですが、ジャンクフードはまさにそういう食品です。スナック菓子と同カロリー分の魚を食べたとしたら、良質なタンパク質である魚のほうが、脂肪燃焼の面でも美容の面でも、プラスの効果があることは明らかです。

あと、「昼はうどん1杯、夜はおにぎり1個で済ませました」と誇らしげに語られることもあります。確かに摂取カロリーは低いかもしれませんが、そのおにぎり1個分の炭水化物を消費するために必要なタンパク質、ビタミン、ミネラルが不足している。カロリーが増えたとしても、おひたし、冷や奴、焼き魚を足したほうが、圧倒的に痩せやすい体質になります。

極端なダイエットに走って、短期間的には痩せたとしても、続きませんし、リバウンドしてしまう。脂質、タンパク質が足りないと筋肉が落ち、それに伴い代謝も悪くなり、肌はボロボロ、髪もバサバサ……美しく生きていくためには、栄養のバランスが整っていることが不可欠です。カロリーを減らすとしても、何かを極端に減らすのではなく、主菜も副菜も摂りつつ、全体量を少し控える程度がいいと思います。

脂質も身体に必要な栄養素

村農:ダイエットのためにカロリーを減らそうと考えると、つい「油をまったく使わないようにしよう」などと思ってしまいがちです。

渡邉:もちろん油の摂りすぎはよくありませんが、身体のために、脂質も一定量は必要です。むしろ「油を減らす」というより、「いい油を摂る」意識が大切です。「オメガ3脂肪酸」と呼ばれる不飽和脂肪酸は、抗酸化作用も高くてオススメです。魚から摂るのが一番効率がよいのですが、手軽に摂りたいなら「アマニ油」や「エゴマ油」にも多く含まれます。

浜田:極端な話、アマニ油やエゴマ油は「飲んでもいいほど身体にいい油」ですね。逆に摂りすぎてはいけないのが、バターや豚バラなどに含まれる動物性の脂質。でも、皆さんそういう脂質がお好きなのもよくわかるんです。飲食店でメニュー開発する際、「リピーター」を得やすいのは「油脂」「塩分」「肉」だったりするんですよね。間違いなく高カロリーな食事になるんですけど、多くの人がそれに中毒性を感じちゃうんです(笑)。

村農:脂っこくて塩辛いお料理にやみつきになる気持ち、わかります(笑)。

ローカーボの先を行く
「バランスカーボ」という考え方

村農:最近注目されている「ローカーボ(低糖質)ダイエット」についてもお聞きしたいのですが、どうお考えでしょうか。

渡邉:確かに糖質を減らすと減量が効率良く進む場合があります。また日本人は欧米人よりも糖尿病になりやすい体質があるため、糖質の摂り過ぎを見直す必要があるのは確かです。糖質を減らすぶん、しっかりタンパク質と脂質で補うことがポイントです。

けれども、糖尿病リスクのない健康な方まで、好きな米を無理にガマンしているのを見ると、疑問に感じることもあります。そこで私が提唱したいのは「バランスカーボ」という考え方。「栄養バランスを考えて、上手に糖質を摂りましょう」ということです。たとえば、主食として大切な米を減らすより、まず減らすべきなのは「エンプティカロリー」。いわゆる、清涼飲料水やジャンクフードなどです。

そして栄養面から考えて、白米よりも玄米や分づき米、雑穀米をおすすめします。白米でも玄米でも糖質量としては変わらないのですが、玄米には、糖質を燃やすのに必要なビタミンやミネラル、血糖の急激な上昇を抑える食物繊維など、身体にプラス作用のある栄養素が多く含まれるからです。さらに玄米は噛めば噛むほど味わいもありますので、銀シャリのかきこむような早食いや食べ過ぎを防げることが多いようです。

浜田:私も大賛成ですね。カレーやお寿司、お弁当など、外食で白米を食べる機会は多いので、家で食べるぶんは玄米を中心にしてみるとか。玄米はおいしくないイメージがあるかもしれませんが、圧力鍋で炊けば抜群においしく炊くことができますよ。圧力鍋がなかったら、最近の炊飯器は『玄米モード』があるのでそれを利用しても良いと思います。玄米以外にも五穀米や麦ご飯など、ビタミンやミネラル、食物繊維が豊富なご飯はあります。

村農:砂糖にも白砂糖だけでなく、三温糖や黒糖などがあって、なんとなく「精製度の低いもののほうが身体にいい」というイメージがありますが……。

浜田:マクロビオティックなど、そういう考え方をする人もいますね。でも、個人的にはそこまでストイックにならなくてもいいんじゃないかと思うんです。レシピによっては、白砂糖を使ったほうがおいしいものもありますしね。

ただ、市販の飲み物によく使われている「果糖ブドウ糖液糖」は要注意だと思います。砂糖よりも、身体に吸収されやすくなっているんです。よくジムで、軽く走った後や短時間筋トレをしただけで、スポーツドリンクをごくごく飲んでいる人を見かけますけど、話しかけたくなっちゃいますもん。「運動した時間が無駄になってしまうから……」って(笑)。

身体が飢餓状態になっているときにそんなことをしたら、糖質がさらに吸収されやすくなってしまいます。アスリートレベルにハードな運動量の場合は別ですが、一般的な大人の場合、運動後に飲むとしたら、スポーツドリンクを倍くらいに薄めて少しずつ飲むか、無調整豆乳がオススメですね。汗をかいたぶんだけ補うくらいに水分を補給し、良質なタンパク質を摂取することで、筋肉疲労も改善されます。

理想的な「バランスカーボ」を叶えるレシピとは?

村農:さて、そろそろ今回のテーマ「低カロリーとバランスカーボ」を踏まえたレシピを検討したいと思います。これまでのお話の中で出てきたキーワードは、「腹八分目」「低カロリーにこだわりすぎず、身体にいい食材を」「栄養バランスはキープ」「不飽和脂肪酸」「バランスカーボ」「玄米食」……などといった内容でしょうか。

村農:食事をする際、「腹八分目がいい」とわかっていても、なかなか我慢するのが難しいですよね。

渡邉:お腹が空くと、わーっと食べて「満腹のサイン」に気づかないまま、食べすぎてしまいますよね。よく噛んで、ゆっくり食べていれば、そのサインを見逃さずに済むはずです。

浜田:「よく噛む」ということを意識するためにも、やはり食感が大事だと思いますね。根菜や海藻、きのこなど、食感も優れているうえに低カロリーで食物繊維も豊富な食材をレシピに取り入れてみましょうか。

渡邉:あと、「減塩」も考慮しておきたいですね。しょっぱいものはついつい食欲をそそります。でも素材の「うまみ」が生かされ、「だし」をきかせれば、塩分を増やさなくてもおいしく仕上がります。減塩、というと味気ないイメージですが、「うまみ」と「だし」の工夫でおいしく楽しくできます。

浜田:「だし」をうまく使うことで、おいしさを保ったまま減塩をすることは可能です。あと、高級食材じゃなくても、旬の食材はうまみが強いのでおすすめですね。

渡邉:以前は「うまみで減塩」と呼んでいましたが、今は一歩進んで「味覚育てる減塩」。うまみを生かした料理を続けていると、味覚が鋭敏に育ちます。

村農:興味深いお話ですね。次回、詳しくお聞かせいただけますか? あと、個人的な要望ですが、朝食に和食を食べたいと思っていても、なかなか時間が取れなくて。玄米を気軽に摂れるような一品があると助かります。

浜田:わかりました。あと、「不飽和脂肪酸」を摂るなら、青魚を使ったレシピも考えてみましょうか。

村農:ありがとうございます。それと、当社のメンバーからは「どんぶり一つで手軽に食べられるもの」「うどんも食べたい」というリクエストも寄せられています。

浜田:出た、「炭水化物好き!」(笑)。まかせてください。なんとかしましょう!

Profile

渡邉 美和子

内科医師。東京ミッドタウンメディカルセンター特別診察室長。臨床の場で会員制医療における健康危機管理や医療相談に携わるほか、一般社団法人メディカルファーム代表理事として医学的知識を生活に浸透させるための医療事業に関わる。日本抗加齢医学会、日本内分泌学会をはじめ医学学会でのお弁当監修など、独自の食指導に力を入れている。

浜田 陽子

料理研究家。栄養士。株式会社Studio coody代表取締役。生活習慣病、食育、ダイエット、乳幼児栄養、妊産婦栄養などを専門分野とする。TV番組への出演やフードコーディネート、雑誌・書籍等への執筆、キッチンツールの企画開発、教育・行政機関とのタイアップなど、携わる業務は多種多様。フードビジネスとメディアと消費者を繋ぐ、新たな業態を展開する。

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