いい大人のための食育会議

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Vol.4

腸内環境改善

「いい大人のための食育会議」第4回目のテーマは、「腸内環境改善」。最近、「腸活」という言葉も耳にするように、腸内環境に多くの方の関心が集まっています。便秘が当たりまえになってしまっていたり、お腹のゆるさが気になったり……なかなか満足のいく「快“腸”生活」とはいかない大人のために、「腸内環境を整える」食習慣を考えます。

腸の不調は万病のもと?

村上農園(以下、村農):腸内環境を整えることで、身体にはどんなメリットがあるのでしょうか。

渡邉美和子先生(以下、渡邉):「腸内環境を整える」と聞いて、おそらく皆さんが思い浮かべるのは「便秘や下痢になりにくい身体づくり」ということでしょう。けれども実は、腸内環境が乱れていると、免疫力の低下やメタボリックシンドローム、糖尿病など、身体にさまざまな悪影響を及ぼすことが明らかになってきています。

講演会などで「身体の中でいちばん血流が多いのはどこだと思いますか?」という質問を投げかけると、「心臓」「脳」などと答える方が多いのですが、実は腸をはじめとした消化器がもっとも血流の多い臓器です。血流が多いということは、他の臓器に比べて活動が活発で、加齢による機能の低下、つまり「老化」が進みやすいということ。腸内環境の乱れは腸の働きに負荷をかけ、老化の進行をさらに早めることにつながります。つまり、腸内環境を整えることは、現在の不調を改善するだけでなく、先々の健康維持にとっても大切ということです。

浜田陽子先生(以下、浜田):食物に含まれる栄養の多くは、小腸から吸収されています。きちんと栄養を消化して吸収できる環境をつくることが大切なんです。それに、手足の末端が冷えたり、肩こりになったりするのも、腸の不調が一因になっている部分があると言われます。

腸内環境を整える食習慣

村農:腸の環境を整えるには、どうすればいいのでしょうか。

渡邉:「腸内フローラ」という言葉を耳にしたことのある方もいると思いますが、これは腸の中に生息する細菌の集まりのこと。さまざまな種類の細菌が種類ごとにかたまりをつくって生息している様子が、植物が群生している花畑(=flora)に似ていることからその名が付けられました。腸内フローラを構成する細菌の種類は100以上、数はおよそ100兆個で、なんと私たちの体を構成する細胞数(約60兆個)よりも多いんですよ。腸内フローラを整えるには食事はもちろん、運動も大切です。消化された食べ物は腸管内でぜん動運動によって運ばれますが、これを活性化するには適度な運動で全身を動かして、腸に刺激を与えることが効果的です。

浜田:腸内フローラのバランスを整えるにはどんな食事がいいのかというと、まずは食物繊維。海藻類やドライフルーツ、ナッツ、大豆などを積極的に摂ることをおすすめします。あと野菜や果物などに多く含まれる、“第七の栄養素”ファイトケミカル。納豆やヨーグルトなどの発酵食品もいいですね。私の場合、整腸作用を軸に自分の食事を考えているところがあります。腸を整えることで、冷えなど体質的な弱点を克服しようと意識しているんです。腸の環境が乱れると、たちまち体調が崩れてしまうような気がするんですよね。

村農:それだけ、腸を整えることは大事ということですね。

渡邉:身体にいいものを食べることも大切ですが、食べる時間帯もとても重要です。特に気をつけていただきたいのは、寝る直前には食べないということ。身体が夜間の睡眠を必要とするように、腸管にも休息は不可欠です。寝る直前に食べ物が胃に入ってきてしまうと、本来休息しなければいけない時間に腸管を休めることができません。睡眠中は、全身の臓器の修復が行われますが、消化が行われていると血流が消化器に集中してしまい、大切な臓器の修復が妨げられてしまうことにもつながります。加えて、就寝時空腹でないとアンチエイジングホルモンとしても知られる成長ホルモンが分泌されませんし、消化管のぜん動を促し翌日の消化機能を万全にするホルモン、モチリンも分泌されないので十分な消化ができず、翌日の胃もたれや便秘につながります。就寝時間の5時間前……遅くとも3時間前までには、食事を終えていてほしいです。

浜田:「よく噛む」というのも重要なポイントですよね。食べ過ぎを防ぐことにもつながります。

渡邉:日本人が丼ものをかきこんだり、蕎麦を噛まずにすすって食べるのは文化的な背景があるから仕方ない部分もありますけど、胃腸のことを考えればあまり好ましくない食べ方ですね。基本的な生活習慣として、「腹八分」が理想なのは確かですが、個人的には、お腹いっぱい食べてもいいと思いますよ。けれども往々にして、噛まずにかきこんでしまうことで、その「お腹いっぱい」が「食べ過ぎ」になってしまっているように思います。よく噛んで、ゆっくり食べれば、満腹感を得て、自分のお腹が満足しているポイントを逃さずに済むと思います。

“胃腸の声”に耳を傾けよう

浜田:実は私、先日十二指腸潰瘍にかかってしまったんです。ストレスが影響したみたいで。

渡邉:そう伺いました。大変でしたね。もう大丈夫?

浜田:ええ、おかげさまで。それで、医師の診断のもとに投薬治療と食事療法を行ったのですが、実感したのは「胃腸を休めること」の大切さ。軽い断食が身体の回復に役立ってくれたと感じています。体調に合わせて、たとえばプチ断食をやってみるのもいいでしょうし、先ほど渡邉先生がおっしゃった通り、夜にしっかり胃腸を休ませることは大事だと思います。そして、朝何を食べるかも大切ですよね。「Breakfast(=朝食)」ってつまり、「断食(=fast)を破る(= break)」ってことですから。

村農:朝食にふさわしいレシピはどんなものでしょうか。

浜田:先ほどお話しした通り、食物繊維やファイトケミカル、発酵食品などを意識するのが基本となりますが、正直なところ、体質によって人それぞれなんですよね。私の場合、今日は消化のいい甘酒と、リンゴとキウイのフルーツヨーグルトをいただきました。朝食を食べない日もあるくらいです。自分が快調だと思える食習慣を見つけていくのがいいと思います。

村農:ヨーグルトはお腹に良さそうな気がしますが、一方で「あまり乳製品は摂らないほうがいい」といった説も聞かれて、どうすべきなのか迷ってしまいます。

渡邉:それも体質によるんですよね。確かに学会でも牛乳や乳製品の摂取についてさまざまな説が取り上げられていますが、たとえばヨーグルトを食べてみて、お腹がゆるくなってしまうのだったら、その人にはあまり合っていないということでしょう。体調やお通じが良くなるというのなら、合っているということ。ヨーグルトの種類によってもだいぶ異なりますよね。

浜田:そう。うちでは市販の種菌でヨーグルトを自家製しているのですが、「これがいちばんおいしくて、自分の身体にも合っている」というものがありますね。

渡邉:それこそ「いい大人」ですから、食べたものがどのように作用しているのか、自分で敏感に感じ取りながら判断していけばいいと思います。

村農:体質によって人それぞれ違うということでしたら、何を基準に判断していけばいいのでしょう。お通じや肌の調子がよくなれば、「合っている」ということでしょうか。

渡邉:いちばんわかりやすいのは便ですね。便の量や回数、においがきつくないか、形はどうか……。「普段と比べてどうか」という変化を意識するといいですよ。

適切な時間に腸にいい食事を

村農:特に女性の場合、便秘に悩む人が多いですよね。そういった場合にオススメのレシピはありますか。

渡邉:どんな栄養素が欠乏しているかによって異なります。食物繊維が足りない場合もありますし、たとえば極端なダイエットで脂質が足りない場合にも、便秘になることがあるんですよ。

浜田:糖質制限している方がご飯を食べたら、お通じがよくなった、ということもありますね。

渡邉:心理的ストレスによる緊張状態が続いて、胃腸の働きが弱くなることで便秘が発生することもありますから。必ずしも食べ物だけが要因ではないですし。

村農:やはり、自分の体質を見極めることが大切なんですね。

浜田:ただ経験的に、多くの方に「これは効く」という食材はいくつかあります。まず、大豆などの豆類。食物繊維がたくさん含まれています。特に納豆は、豆製品でもあり発酵食品でもあって、腸にいい栄養素が豊富です。パックから出してそのまま食べられるので、食事に取り入れやすいところもいいですね。

渡邉:玄米も食物繊維不足にいいですよね。玄米がゆにすれば水分不足も一度に解消することができます。

浜田:もち麦など雑穀系もオススメです。あと、意外と不足しがちなのが海藻類。週に一度も食べていない方が多いのではないでしょうか。海苔も海藻類の一種ですから、食卓に焼き海苔を置いてスナック感覚でつまめば手軽に摂れますよ。

村農:夜、小腹が空いたときにもよさそうですね。

浜田:でも気をつけてほしいのは、先ほど渡邉先生が言われていたように、食べてから寝るまでにしっかり時間を空けること。特に食物繊維は基本的に消化しにくいものなので、いくら便秘によさそうだからといって、たとえば海藻サラダなどを夜遅くに食べるのは、むしろ腸にとって逆効果ですからね。

村農:今までのお話をまとめると、今回のポイントは「食物繊維」「発酵食品」を意識的に摂ること。そして寝る3時間前までには食事を終えて、しっかり胃腸を休ませる、ということですね。

渡邉:そうですね。それと、「自分の体質を意識すること」。

村農:そうでした。お話を伺うたびに感じますが、食は本当に奥深いものですね……。

Profile

渡邉 美和子

内科医師。東京ミッドタウンメディカルセンター特別診察室長。臨床の場で会員制医療における健康危機管理や医療相談に携わるほか、一般社団法人メディカルファーム代表理事として医学的知識を生活に浸透させるための医療事業に関わる。日本抗加齢医学会、日本内分泌学会をはじめ医学学会でのお弁当監修など、独自の食指導に力を入れている。

浜田 陽子

料理研究家。栄養士。株式会社Studio coody代表取締役。生活習慣病、食育、ダイエット、乳幼児栄養、妊産婦栄養などを専門分野とする。TV番組への出演やフードコーディネート、雑誌・書籍等への執筆、キッチンツールの企画開発、教育・行政機関とのタイアップなど、携わる業務は多種多様。フードビジネスとメディアと消費者を繋ぐ、新たな業態を展開する。

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