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2011年06月27日

2011年6月24日、25日 日本ヘリコバクター学会にて発表
ブロッコリースプラウトの機能性成分「スルフォラファン」に
胃内での抗ピロリ菌効果が期待
胃内と同等の酸性環境下でウレアーゼ活性を抑制

 ブロッコリーの新芽(スプラウト)に含まれるスルフォラファンが、胃内と同じ酸性環境下でピロリ菌の病原因子であるウレアーゼ活性を抑制することが明らかになりました。スルフォラファンにはこれまでにも抗ピロリ菌効果が確認されており、人による臨床試験も行われています。
 本研究結果は、東京理科大学薬学部の谷中昭典教授らによるもので、2011年6月24日、25日に開催された日本ヘリコバクター学会学術集会にて発表されました。

【背景と目的】
ピロリ菌 (C)筑波大学
 ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は人の胃に棲む細菌で、胃がんの発症に関与することが明らかになっていますが、胃炎や胃潰瘍などの症状がないと除菌は保険の適用外となることなどから、食品による除菌に期待が寄せられています。
 今回の研究では、ピロリ菌の病原因子の一つ『ウレアーゼ』に注目しました。ウレアーゼは、ピロリ菌が胃に棲むためになくてはならない物質で、産生されるアンモニアが発がん物質を作り出すとも考えられています。これまでにもブロッコリースプラウトに含まれるスルフォラファンのウレアーゼ活性抑制作用は報告されていますが、胃内と同じ酸性環境下での働きについては確認されていませんでした。そこで今回、スルフォラファンの酸性環境下でのウレアーゼ活性抑制作用について調査を行いました。

【方法】
 スルフォラファン(0、8、32、128μg/ml)を含む酸性培養液でピロリ菌を培養し、ウレアーゼ活性を測定した。測定は、bromo phenol blue(BPB)を用いた新しい簡易測定法で行った。

【結果】

酸性環境下(pH4.0)におけるウレアーゼ活性  酸性環境下(pH4.0)におけるウレアーゼ活性
酸性環境下でも、スルフォラファンの濃度依存的にウレアーゼ活性が抑制された。

■谷中教授コメント
 これまでに私たちは、胃がんのリスクを5倍以上に高めるといわれているピロリ菌の病原因子ウレアーゼに対して、スルフォラファンが中性の環境で抑制作用を示すことを報告しました。さらに今回は、ピロリ菌が生息する胃内環境に近い酸性環境でもスルフォラファンが同様の作用を示すことを初めて明らかにしました。スルフォラファンの抗ピロリ菌効果については、スルフォラファンが胃酸によって分解されて効果がなくなってしまうのではないかという点が疑問視されていましたが、今回の研究で酸度の高い胃内でもスルフォラファンが抗ピロリ菌効果を発揮することが示されました。

■研究者プロフィール

谷中昭典(やなか あきのり)
東京理科大学 薬学部薬学科教授 医学博士


<略歴>
 1985年 筑波大学大学院医学研究科 修了
 1995年 筑波大学臨床医学系消化器内科 講師
 2007年 東京理科大学薬学部 臨床薬理学 教授

<専門領域>
 消化器疾患の病態生理、消化器内視鏡

<研究テーマ>
 Helicobacter pyloriによる胃疾患発症機序の研究
 食品(ブロッコリースプラウト)による消化器癌予防効果の研究

■用語解説
ブロッコリースプラウト
1997年に米国ジョンズ・ホプキンス医科大学教授のポール・タラレー博士が、がん予防研究の過程で開発した野菜。有用成分スルフォラファンを一般のブロッコリーの約7倍含む「ブロッコリースプラウト」と20倍以上含む「ブロッコリー・スーパースプラウト」がある。日本では村上農園が同大学とライセンス契約を結び、生産・販売を行っている。

スルフォラファン
ブロッコリースプラウトに含まれる有用成分。体の解毒酵素や抗酸化酵素の活性を高め、がんや様々な疾患の予防効果が期待されている。

ピロリ菌(正式名称:Helicobacter pylori
ヒトの胃に棲みつき、胃炎や胃潰瘍、ひいては胃がんの発症に深く関与していると言われる細菌。日本人の約半数、40歳以上の8割が感染していると推定されている。

ウレアーゼ
尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解する酵素。アンモニアを産生することで胃酸を中和し、胃内にピロリ菌の棲める環境を作る。

※村上農園では、2006年から東京理科大学谷中教授に研究助成を行い、スルフォラファン研究の発展に寄与しています。