ブロッコリースプラウト(新芽)に、喫煙による酸化ストレスを軽減する効果があることが、ヒトを対象とした臨床試験によって確認されました。本研究は、東京理科大学薬学部の谷中昭典教授(現・筑波大学医学医療系教授)等によるもので、株式会社村上農園は谷中教授への研究助成を行っています。本研究内容は、2012年3月30日に日本薬学会にて発表されました。
【背景と目的】
喫煙によって体内に生じる酸化ストレスはがんや循環器疾患、呼吸器疾患など様々な疾病の原因となります。ブロッコリースプラウトに含まれる「スルフォラファン」には抗酸化酵素を誘導し、体内の酸化ストレスを抑える効果が明らかになっていることから、本研究では、ヒトを対象に、ブロッコリースプラウト摂食による喫煙で生じる酸化ストレス軽減効果について検討しました。
【方法】
喫煙習慣のある健常な男性を対象に、ブロッコリースプラウト(50g)もしくはアルファルファスプ ラウト(50g)の摂食後、喫煙した際体内に生じる酸化ストレス(8-OHdG)について測定しました。
・試験食品
ブロッコリースプラウト(BS)・・・スルフォラファンを含む(試験区)
アルファルファスプラウト(AS)・・・スルフォラファン以外の栄養素はBS とほぼ同じ(対照区)
・被験者
喫煙習慣のある成人男性11名
(クロスオーバー法を用いて各被験者について試験区と対照区の2 回実施)
・試験プロトコール
禁煙4時間後、16時間後にBS(50g)もしくはAS(50g)を摂食し、20時間後に喫煙。喫煙直前と喫煙直後、喫煙2 時間後に8-OHdG を測定。
【結果】
アルファルファスプラウトの摂食(対照区)で、喫煙後に酸化ストレスの指標(8-OHdG)が優位に上昇したのに対して、ブロッコリースプラウトの摂食(試験区)では上昇が抑制されました。
■谷中教授コメント
ブロッコリースプラウト(新芽)に含まれる有用成分スルフォラファンには、解毒機能を向上させ、体の酸化ストレス応答能を強化する働きがあることが知られており、がん予防効果やピロリ菌殺傷効果、花粉症抑制効果など、多くの研究が報告されています。
私たち研究者は喫煙の健康被害について重要な問題と捉えていますが、現在でも日本人男性の32.2%、女性の8.4%が習慣的に喫煙しており、非喫煙者にとっても受動喫煙のリスクが存在します。タバコの害を防ぐには禁煙がベストな方法ですが、なかなか止められない喫煙者にとって食品で喫煙の害を防ぐ可能性があると示唆できたことは意義のあることと考えています。
■研究者プロフィール
谷中昭典(やなか あきのり)
<略歴>
1985年 筑波大学大学院医学研究科 修了
1995年 筑波大学臨床医学系消化器内科 講師
2007年 東京理科大学薬学部 臨床薬理学 教授
2012年 筑波大学医学医療系 教授
<専門領域>
消化器疾患の病態生理、消化器内視鏡
<研究テーマ>
Helicobacter pyloriによる胃疾患発症機序の研究
食品(ブロッコリースプラウト)による消化器癌予防効果の研究
■用語解説
ブロッコリースプラウト
がん予防研究に従事していた米国ジョンズ・ホプキンス医科大学教授のポール・タラレー博士が、品種の選抜と育成方法の確立によって、有用成分スルフォラファンの高濃度含有に成功した野菜。日本では村上農園が同大学とライセンス契約を結び、1999 年から生産・販売を行っている。
スルフォラファン
ブロッコリースプラウトに含まれる有用成分。体の解毒酵素や抗酸化酵素の活性を高め、がんや様々な疾患の予防効果が期待されている。
8-OHdG
酸化ストレスによって体内に生じる物質。安定性が高く、迅速に尿中に排泄されることから、酸化ストレスによる害を速やかに確認するための指標として使われる。
村上農園では、高濃度スルフォラファンの特許を持つジョンズ・ホプキンス医科大学とライセンス契約 を結び、国内で唯一スルフォラファン含有量を保証したブロッコリースプラウトを生産しています。