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2024年08月30日

村上農園−ジョンズ・ホプキンス大学研究者フェローシッププログラム 体験記

「村上農園−ジョンズ・ホプキンス大学研究者フェローシッププログラム」では、これまでに2名の奨学研究者(フェロー)を日本からジョンズ・ホプキンス大学へ派遣しています。

本プログラムへの応募のきっかけや、現地での研究や生活について語ってもらいました。

 

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右:石川 翔一さん

左:三浦 勇さん

 

 

石川 翔一さん

派遣期間:2022年7月〜2024年6月

 

派遣前の日本での仕事や専門分野

派遣前は小児科医をしていました。私が専門としていたのは新生児科医で、早産児や低出生体重児、あるいは先天性疾患を有するハイリスク新生児が対象です。そういったハイリスク児は出生直後から新生児集中治療室(NICU)に入院することになります。退院後の成長発達をフォローすることも多く、その診療経験から、小児の神経発達に興味を持つようになりました。

 

フェローに応募したきっかけ・理由

小児の神経発達について研究できる場所を探す中で、本プログラムの責任者である、ジョンズ・ホプキンス大学の澤 明先生について知りました。澤先生が主宰される教室では、スルフォラファンによる治療効果の研究を行っており、そのプロジェクトについてインターネットで調べていたところ、フェローシッププログラムのことを知り、応募しました。また、単身ではなく家族も帯同できるだけの待遇であることも決め手の一つになりました。

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澤 明先生と

 

アメリカでの研究内容

私の研究は、先天性てんかん患者に合併する気分障害などの精神症状がテーマでした。それらの精神症状において、アストロサイト※1の酸化ストレスへの反応が重要な役割を有することがわかりました。そして、スルフォラファンのもつ抗酸化作用が治療効果を有するということを研究していました。動物の行動実験を通して、あるいは組織学的、生化学的にその効果を検証し、メカニズムを探究することが私の使命でした。

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ジョンズ・ホプキンス大学での研究の様子

 

フェローシップに参加した感想

まず研究に集中できる環境であったというのが、日本との大きな違いでした。日本の大学病院で研究を行っていても、外来や入院患者の診療、当直といった臨床業務も行う必要があります。場合によっては臨床業務が優先されてしまい、研究がなかなか進まないということはよくありました。また、アメリカでは自分自身で時間を調整することができたため、勤務時間外や週末は家族との時間を優先させることができました。子どもが小さな時期に、多くの時間を家族と共有できたということも、大きなメリットであると思います。

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ご家族と

 

 

三浦 勇さん

派遣期間:2023年7月〜2025年6月(予定)

 

派遣前の日本での仕事や専門分野

初期研修終了後、東京女子医科大学脳神経外科に入局し、大学や関連病院にて、臨床を中心に仕事をしていました。脳神経の基礎研究にも興味があったので、医師7年目の脳神経外科専門医取得後に大学院に入学し、理化学研究所の脳神経科学研究センター(CBS)にて、社会性に関する神経回路、特に島回※2にフォーカスした研究を2年間行っていました。

 

フェローに応募したきっかけ・理由

ジョンズ・ホプキンス大学の澤先生のもとで研究経験がある理化学研究所の方から、このフェローシッププログラムについて教えてもらいました。アメリカの著名な大学で基礎研究をやってみたい、また、神経回路の研究経験や、in vivo imaging※3の経験を活かすことができると考え、応募しました。

日本での仕事の都合で本来の派遣開始時期に渡米することはできませんでしたが、事務局の配慮で派遣のタイミングを調整いただき、参加することができました。

 

アメリカでの研究内容

精神疾患において、炎症が病理に関与しているといわれていますが、サイトカイン※4やケモカイン※5に関して不明な点も多いです。我々は、患者さんから採取した脳脊髄液データなどを調べて、上昇していた特定の炎症性サイトカインにフォーカスしています。現在はモデルマウスを用いて、その炎症性サイトカインがどの領域に影響しているのか、その病態について調べています。ブロッコリースプラウトに含まれるスルフォラファンは抗炎症作用なども知られていますが、後々、ここにつながるデータが出せればと思っています。

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澤先生の教室のメンバーと

 

フェローシップに参加した感想

このフェローシップでアメリカ生活を経験し、研究や日常生活を通じて、日米の文化の違いなども勉強しています。それによって、以前よりは広い観点で物事をとらえることができるようになったと感じています。3人の娘は現地の小学校、幼稚園に通っていますが、彼女らも日本では得られない経験を経ることで、視野を広げるよい機会になっているのではないかと思います。

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ご家族と

 

 

※1 アストロサイト:脳内の細胞の一種。脳内環境を整え、神経細胞の働きをサポートする

※2 島回:前頭葉、側頭葉、頭頂葉といった脳の領域を密につなぎ、感覚情報と情動を統合する脳領域

※3 in vivo imaging:生物を非侵襲的に視覚化する方法

※4 サイトカイン:細胞から分泌されるタンパク質であり、細胞間相互作用に関与する生理活性物質の総称

※5 ケモカイン:サイトカインの一種で、主に白血球の遊走を誘導するもの

 

 

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